獺祭プチセミナーについて
8月26日(土)と8月27日(日)に当店主催で行った獺祭試飲会IN川崎。
ご参加されたお客様、誠にありがとうございました。
私も旭酒造の営業部長松藤さんのお話を聞いて魅力を再確認しました!
今回は私が聞いたセミナーの内容をダイジェストでお伝えします。
旭酒造の考え
酒蔵がお客様の幸せのお手伝いをできることはシンプルに『美味しいお酒をお届けすること。』
美味しいお酒と言っても全ての人に美味しいお酒を造るのは不可能だが、より多くの人に美味しいと思ってもらえるお酒を造ることが目的。
より多くの人に美味しいと思って頂けるお酒を探究した結果が
山田錦のみを使用した純米大吟醸のお酒だった!
日本酒の消費低迷と獺祭の成長
日本酒業界は最盛期と比べるとここ43年間で出荷量は約1/3に。
それに対して旭酒造はこの33年間で出荷数量33倍、売上金額は110倍へアップしているといいます。
業界の出荷量が落ち込む中で獺祭はなぜ成長できたのでしょうか?
→酔うために大量に清酒を消費していた時代から『少し高くても美味しく少量でも満足できるお酒』へと嗜好変化した考えられます。
私も少量を楽しむのが好きですし、周りの方もゆっくり味わう方のほうが多いように感じられます。
旭酒造の酒造り
四季醸造をしている
日本酒は寒い時期に秋~春までの寒冷な時期に仕込むのが一般的ですが
旭酒造では四季を通して獺祭を製造しています。
夏は気温が高いため低温で発酵させる酒造りには向かない季節です。
しかし旭酒造の蔵は通年5度程度に保たれています。
どこかで見たことがあるかもしれませんが、旭酒造の蔵は近代的なビルになっています。
一年中温度を一定に保つにはビルのほうが温度管理がしやすとのことです。
たしかに、木造だと隙間などが多くて管理が難しいですよね。非常に合理的だと思います。
全量山田錦を使用
山田錦は粒が大きく、酒米の王様と言われています。
価格も他の酒米と比べると非常に高価。
背が高く、稲穂が重いため垂れて倒れやすいため生産が非常に難しいためです。
精米について
獺祭の主要ラインナップである50、三割九分、二割三分の製法は全て同じです。
違うのは精米歩合のみだそうです。
獺祭50は玄米の重量の50%になるまで表面を磨いています。
獺祭二割三分になるとなんと23%になるまで磨いていることになります!
23%まで磨くと見た目にもすごく小さく感じられます。
旭酒造ではよくお客様や技術者から「磨きすぎではないか?」と言われることがあるそうです。
表面の糠や胚芽を取って中心部分(芯白)を残すのが精米の意味ですが
例えば山田錦を50%くらい磨いたらほとんど米の芯の部分になるから
それ以上磨くのは米の無駄ではないかという意見。
しかし!
同じ製法で精米歩合だけを変えた50と三割九分と二割三分は私が飲んでみても違いはハッキリと分かります。
明確に違いを感じられますし、味わいにもそれぞれ特徴があります。
旭酒造の考え方として「杜氏の腕が良ければ60%磨きでも良いお酒ができる」という意見ももちろん正しいことです。
しかし精米をすることでより良いお酒を造れるのであればしっかりと精米をする。
磨くことでアドバンテージを得ることができれば、その分の努力や技術を他のことに充てたいという考えです。
純米大吟醸しか造らない蔵
前述のように旭酒造は1つのことを突き詰める蔵だと思いました。
純米大吟醸のみにした理由も、良い酒造りいかける力を分散させないで
『純米大吟醸に全ての力を注ぎこむ』ためなのだそうです。
獺祭の誤解!?
誤解①
私も獺祭を販売しているとよく聞きます。
「機械がオートメーションで作ってるんでしょ?」と
もちろんそんなことはありません。
旭酒造ではやっていることは、誰もが思い浮かべる酒蔵の手作業と変わりがありません。
品質に関わるところは全て手作業です。
例えば、お米を水で洗う作業で洗米というものがあります。
このときにお米は水を吸うのですが、この吸水量が1%違うだけでも
酒質にはダイレクトに影響されるそうです。
旭酒造では1日に6トンから8トンの洗米をします。
ここでの誤差を最小限に抑えるべく、手作業で4人が15kgずつ洗米していくそうです。
一度目で吸水量が多すぎても次回からは調整が効くため最初の1回目に誤差があったとしても全体ではほぼ誤差の無い正確な吸水量となるのです。
まさにオートメーションとは真逆の人手のかかる手作業の賜物と言えますね。
上は麹室の様子、この大きい台が1フロア20台で2フロアあります。
合計40台を人の手で慎重に作業していきます。
どこの蔵よりも人手を使っているのをお分かりいただけたと思います。
誤解②
「大きいタンクで大量生産しているんでしょ?」
違います!全て小さいタンクで丹念に丹念に造っています。
これが獺祭のタンクが置かれた部屋です。
1フロアでタンク100本が3フロアで合計300本あります。
なぜこんなに大量のタンクが必要なのでしょう?
よくスーパーなどで見かける低価格帯の商品は大抵上の模式図のように大きなタンクで仕込んでいると思われます。
製造コスト下げるには大きいタンクで一度に仕込んだほうが良いためです。そのような製品を作っている蔵も技術は高いため鑑評会用の小さなタンクで仕込んだものはすごく美味しい。
旭酒造では全て出品酒クラスのお酒で使われるような小さなタンクで丹念に造っています。
そのためタンクの数が多いのです。
この大量のタンク1本1本をサンプルを取って温度や発酵状況などを管理しています。
データをもとにして人の手で温度を調節して発酵に最適な状態に調整します。
例えばタンクの周りを囲って保温する、タンクの下から温めたり、冷水を回して冷却したりと。
このようにして小さいタンクで常に手をかけて造られているのが獺祭です。
あとがき
以上が、当日私が伺った内容の一部です。
機械もデータも人の力も全て合わせて求めるお酒を醸すストイックさを感じました。
ここでは文字だけでの紹介ですが実際に飲んで体感してみると、魅力がよくわかると思います。
獺祭を2種類以上並べての飲み比べはとても楽しいので、皆様も是非飲み比べてみてください。