ブリューゲルは16世紀オランダの画家ですが、風景画の背景の青がとても美しいですね。
美術の教科書にも載っているくらい人口に膾炙したブリューゲルですが、人の醜さを描いた一連の作品よりも風景画の方が圧倒的に素晴らしいです。
とくに背景の奥の青みがかった風景の細やかさ。
上は「イカロスの失墜のある風景」
ギリシャ神話。有翼のサンダルで飛び立ったイカロスが、自身の力を過大評価しすぎて上空まで上がりすぎ、太陽に妬かれて海に墜落するシーン。それを題材にしたブリューゲルの風景画です。
画面右の船の下に、イカロスが溺れている姿がかろうじて見えています。
この絵の奇妙さは、イカロスの失墜という大事件に対して、周囲の農民たちはまるで無頓着にいつもの日常を続けている点からきていると思われます。
ブレヒトがこの画について書いています。「…ここに描かれた伝説的なできごとの見すぼらしさ(失墜したものを、ひとは探さねばならぬ)。人物像は、事件をまるで顧みない。額にシワを寄せることを要求するほどの注意深さについての美しい表現。…恐ろしい事件にたいして配された風景の特殊な美と晴れやかさ。」(ブレヒトの映画・映画論p380)
ブリューゲルの風景画では、人間の残酷さと自然の美しさが並列されている不可解さが特徴でしょう。
それにしても、この絵においても背景の異様な晴れやかさは魅力的ですね。
日本酒「天青」の「雨後の空のような、潤いを含んだ晴れやかさ」とはこういった空を指すのかもしれません。
天青朝しぼり、予約してくださいね。